「オーガニックって、自由だ」【前編】ワークショップ & 野外ライブ|清里オーガニックキャンプ2023「地球と遊ぶ、くらしと遊ぶ」開催レポート

 なぜ清里に来るといつも晴れているんだろう。青白く清涼感のある日差し、瑞々しい新緑の木々、そして張り出された色とりどりのテント。2023年5月20日(土)21(日)の2日間、山梨県は北杜市新栄清里キャンプ場で開催された「清里オーガニックキャンプ2023」には、にこにこと大荷物を背負った大人たちと、無邪気に芝生を駆け回る子どもたちの姿がありました。

「持続的な社会を描くための場づくりの準備を、実践者と地域が一緒になって進める」

 そんなお固いことを言っていた大人たちも、当日になれば羽釜で炊いたごはんを頬張り、ビール片手に音楽で大騒ぎ。そう、難しいことはいらないんです。“持続可能”って言ったってわたしたち自身がガス切れしてちゃ元も子もない。私たち大人が遊ばないと、子どもたちに遊べなんて言えない。そう思いませんか?

 やりだしたらとことんやっちゃう、愉快で「オーガニック」な遊び人たちの2日間が始まります。

text: 野呂瀬亮
photos: 古厩 志帆、ほか

「遊び」と「暮らし」が本質的!?

 昨年2022年に次いで第2回目となった本開催のテーマは「地球と遊ぶ、くらしと遊ぶ」。第1回のテーマである「くらしをひもとく」をさらにさらに紐解き、“見たこと聞いたことあるけどやったことないことをとことんやっちゃおう!”そんな無邪気なサブテーマも誕生しました。会場には33ブースものワークショップやマーケットが広がり、そこかしこに焚き火の爆ぜる音や和やかな笑い声が響きます。

 まず初めにステージへ上がったのは、主催事務局の村上 友和(むらかみ ともかず)さん、岐阜県森林文化アカデミーから萩原・ナバ・裕作(はぎわら なば ゆうさく)さん、そして聞き手に公益社団法人日本環境教育フォーラム事務局長の加藤 超大(かとう たつひろ)さんの3人。特別にあしらわれた竹の装飾を背にイベントのスタートが告げられます。

 「オーガニック=野菜や食品というイメージが強いかもしれないけど、実は『本質的』という意味もあるんです。」

 そう話す村上さんの言葉に私たちはハッと驚かされます。言われてみるとその解釈は曖昧だったかもしれない。では「オーガニック」の旗の元に集まったこの日のブース全てが「地球と遊ぶ、くらしと遊ぶ」ものだとするならば?“遊び”や私たちの“くらし”そのものに本質がある?そんな興味深い頭の体操を皮切りに、「暮らしに戻っても役立つ」魅力的なブースやコンテンツの名前が次々と挙げられていきました。

「やるからにはとことんやっちゃおう!」
焚き火料理、ナイフクラフト、はだしで森あるき、ヤマビルとのふれあい!? 等 33ものワークショップが集結!

 一際大きな幕の下で焚き火を囲む長野 修平(ながの しゅうへい)さんのワークショップは今回も満員御礼。北欧アウトドアの世界を提唱するUPIとコラボし、「モーラナイフ クラフト工房 & 焚火カフェ・クッキング教室」を展開しました。自分で起こした焚き火でクレープやベーコンを焼いたり、コーヒーを入れたりと、隣接するナイフクラフトブースと併せ日常では味わうことのできない極上のオーガニック体験が広がります。

 「初めて血を吸われた瞬間、ヒルが好きになっちゃったんです♡」

 衝撃の一言と相反するキュートな笑顔で来場者を驚かせていたのが、通称「ひるちゃん」こと平川 瑠菜(ひらかわ るな)さん。帝京科学大学で環境学を研究しながら、こうしたイベントでヤマビルや昆虫食などの魅力を伝えている“ヤマビル伝道師”です。くねくねと首を伸ばすヒルや昆虫食のテイスティングに、悲鳴だとか「かわいい!」だとか様々なリアクションが飛び交います。

 すぐ近くには金沢の学生団体「e-sic」の運営する、クロモジの蒸留水を原料とした「QINO SODA」の試飲・販売ブースも出店。こうした学生が主体となったワークショップを導入するのは今回が初の試みです。昨年と同様、会場には多くの学生ボランティアの姿も見られ年代を超えた多様な人たちの輪が生まれていきます。

 2日目の朝には、はだし研究者の金子 潤(かねこ じゅん)さんによる「はだしで森あるき」がスタート。早朝6時にもかかわらず、朝露で湿っている芝生や森の中を歩き回っている人たちの姿がありました。「裸足感覚サンダル・ワラーチ」作りも相変わらず大盛況で、普段私たちがどれだけ足の裏から得られる情報に耳を貸していなかったか。そんなことを深く考えさせられる機会となりました。

 他にも、廃材を使って軽トラックの上に小さな部屋を作る「手作りの家入門」や、薬研を使ったオリジナルの「my七味作り」、 シカの角を使ったオリジナルアイテム作りに、鶏の解体体験 etc..。ライブステージに登場したbirdさんの言葉を借りるなら「ほのぼの系からワイルド系まで」本当に多種多様なワークショップが来場者を出迎えました。地元北杜市からの出店も多数あり、出店者たち自身が積極的に世代や地域をこえた交流を楽しむ姿も。ここでは全てご紹介しきれないので、ぜひコンテンツページやフォトレポートもご覧になってみてください。
 個人的についクスっと笑ってしまったのは、『端材』=『のこりもん』で作った木札をキーホルダーに仕上げる、「キーフーダー作り」でした。

「遊ぼう!地球いっぱい全部!」
bird、宮 武弘、山田 証 たち と遊ぶ愉快で“大きなお友達”たち!

 ワークショップと並んで今年更にグレードアップしたのが「ライブステージ」です。1日目は、ワークショップブースでも参加している森のシンガーソングライター山田 証 (やまだ あかし)さんをトップバッターに、ウクレレシンガーの宮 武弘(みや たけひろ)さん、そしてスペシャルゲストにシンガー&ソング・ライターのbirdさんが出演!

 山田 証さんのステージでは、優しく語りかける歌声が森の中へ溶けていくような、和やかでしっとりとしたライブを披露。歌詞に散りばめられたわが子たちの言葉や、環境教育に視点を置いたメッセージが印象的でした。

 ビールを片手にステージに上がった宮 武弘さんから乾杯が告げられると、会場はグラスを掲げて大盛り上がり!ウクレレとMPCなどの機材を駆使しながら、ご機嫌なリズムと歌声を響かせます。

「“子どもたちに体験を”の前に、僕たち大人が遊ばないとだめでしょ!」

 そんな彼の言葉に“大きなお友達たち”のテンションはマックス!子どもたちに負けない無邪気な笑顔で最高のひと時を分かち合いました。

 ポツポツとランタンに火が灯り始める夕暮れになると、この日のスペシャルアクトであるbirdさんが登場。アコースティックギターに合わせてジャジーな歌声を響かせました。うっとりとステージを見つめる大人たちをよそに、ステージ前を駆け抜ける子どもたち。「めっちゃ走るやん(笑)」、そんなツッコミもありつつ、後半は限定Tシャツをかけた“じゃんけん大会”で大盛り上がり!大人で愉快な音楽のひと時に、ついついお酒も進んでしまいました。

 地元在住のさとうこむぎさんによる「朝ヨガ」と、爽やかな歌声が響くウクレレライブからスタートした二日目のステージ。お昼過ぎには⼭梨県出⾝の⾃然を愛するアウトドアミュージシャン金本あかねさんが登場し、圧巻のサックスライブで会場を大いに盛り上げてくれました。

 ステージでは音楽ライブだけでなく、清里オーガニックキャンプの「肝」とも言える贅沢なトークプログラムも実施。後半は普段はめったに聞くことができない環境教育の分野における権威たちによる貴重なトークやマーケットの様子をお伝えします!